2020年06月26日

2人の世界に入り込む『檀』沢木耕太郎(新潮文庫)

檀一雄の代表作『火宅の人』。
最期は肺がんと闘病している最中に口述筆記で完成させた作品。今この作品を発表したら、ベストセラーどころかいわゆる「炎上」となってしまう事間違いない話でしょう。ただ、気になったのが、檀ふみさんの『父の縁側、私の書斎』ではお父さんへの思い出、愛情しかないのだ。「事を起こして」家庭内は大変だったのに違いない。特に気になったのが、パートナーであるヨソ子夫人。一体どんな気持ちだったのか。その1冊として触れたのが、『檀』(沢木耕太郎)。この話、解説の長部氏でも書かれているが、確かに「不思議」な本です。しかし、最後はこの方法で書かないで、どの方法で書くのか、と思える本である。ヨソ子夫人の一人称でいいのだろうか、淡々と語る、しかし、内容はえぐるような話もあり、はっと寒くなるような話もあり、それでも最後はと何度も何度もラストを読み返す、余韻に包まれる。確かに「不倫」は家庭崩壊させる(よくさせることはないでしょう)、それは間違いないのですが、ヨソ子夫人と檀一雄が静かに散歩していて、檀一雄の問いにヨソ子夫人がポツリポツリと答えてくと思えるこの光景。自分が真横にいたのかと思える内容。沢木耕太郎さんの『流星ひとつ』もそうですが、沢木耕太郎さんのノンフィクションの世界にどっぷり浸かれる1冊です。

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2020年06月13日

献身的な友情を『太宰と安吾』檀一雄(角川ソフィア文庫)

坂口安吾の友人の1人、檀一雄。
坂口安吾には非常に、いやちょっとビックリするぐらい優しい、優しすぎるのだ。娘の檀ふみが『父の縁側、私の書斎』で坂口安吾をかくまう様子を綴っている。
薬のせいで混乱の最中だから、色々な問題が起こる。それでも、檀一雄は坂口安吾に献身的なのだ。坂口安吾の有名なゴミ部屋の写真、この写真は檀一雄の自宅の二階。そんな状況でも檀一雄は、一連の安吾の行動を許すのは、献身的といわず、何といえばいいのだろう。
さらに、安吾が亡くなった時に、檀一雄は『太宰と安吾』では、亡くなる直前の混乱、落胆、悲痛な様子が書かれている。太宰にも献身的で、安吾にも献身的。便覧などでは、檀一雄を『火宅の人』しか紹介されない。その本しか知らないと檀一雄の一面しか分からない。むしろ、その本だけでは、今は許されにくい倫理観であろう。檀ふみの『父の縁側、私の書斎』や彼らの交友、そして、沢木耕太郎の『檀』に触れる事によって、檀一雄の献身的な優しさ、優しさ故の行動(世間的なちょっと、、、と思う事もあるが)に理解を深める事ができる。人間は多層な面をもつ、それを一面だけで見る事のもったいなさを教えてくれた作家である。

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参考にした文献の「新潮日本文学アルバム」は古書店で手に入れました。

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2020年06月09日

太宰の横には『不良少年とキリスト』坂口安吾(新潮文庫)

太宰治と交友をもった友人として先日は、檀一雄を紹介しましたが、
同じ交友をもったメンバーとて、織田作之助、坂口安吾がいます。
『不良少年とキリスト』では、太宰という盟友を失った坂口安吾は思いの丈を述べてます。太宰というと死の臭い、退廃的というイメージがありますが、それを否定し、よりよく生きたい、善行をしたかった筈と述べています。また、太宰が常識人だからこそ、すぐれた文学がかけると、太宰の世間的なイメージとは違う事を感情を出して、書き綴っています。
よくお笑い芸人が元々が変わっているから面白い事をするという話を聞きますが、実は多くのお笑い芸人はかなりの常識人、もしくは真面目に物事を見つめ、だからこそ、常識の「ずらし方」をしっているから面白いことがいえるとのこと。太宰もその「ずらし方」をよく分かっていたのでしょう。

安吾は、太宰が失踪してから手紙を書くのですが、その4日後、太宰の遺体が発見されるということとなり、安吾の心身を消耗していきます。

この『不良少年とキリスト』の表紙では、1枚の写真が掲載されています。撮影したのは、『日本の作家』で有名な林忠彦。同書では、太宰が撮影してもらった写真がありますが、大変酔っていたとのこと。右側に背中が映っている男性、これが安吾です。この時は織田作之助を元々撮影するために撮影に来たのですが、織田作之助は血痰のようなものを履いていて、「これは長くない、撮っておこう」と林は判断し、織田作之助を撮影、残りの撮影チャンスで撮ったのが、太宰治です。プロならではの考えと技術。この酒場の一シーンには、プロがプロを呼ぶ、ものすごく濃密な空間になっていたのではと推察されるのです。

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参考にした文献の「新潮日本文学アルバム」は古書店のフェアで購入しました。
posted by あた at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介