2020年06月04日

願うべき日常の週末『競馬への望郷』寺山修司(角川文庫)

前回、純粋に平松洋子さんのエッセイが読める日々を祈っている話をしました。
今回、新型肺炎で食べる時に当たり前の、「何を」「誰」と「どこで」食べるか?が制限されている、
日常の大事さを痛感してます。
食べるだけでなく、文化や娯楽に対しても同様かと。

本で例えるならば、大阪の景色をじんわりと浸る織田作之助『夫婦善哉』や
新しくは京都を颯爽とかけめぐる森野登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』など
本を読んでから景色を味わいに行くか、
景色を堪能してから、本の世界に入るかなどをいろいろと考えますが、
今の状況ではそれも難しい。

そんなことを思いながら、ふとテレビを見ると、競馬のG1レースが。
競馬も大事な文化(スポーツ)であり、娯楽。
でも、それは様々な人が様々な思いや状況を持ち寄って、成り立つもの。
無観客のレースがこんなに張り合いがないなんて。

寺山修司の『競馬への望郷』の『さらば、ハイセイコー』は、
様々な人生を様々な人が持ち寄り、ハイセイコーとの絆を詠う名作。
また、同本の『騎手伝記』では騎手の悲喜こもごもの人生を
寺山修司の名エッセイを味わうことができます。
どこも文化や娯楽があるところは、人がいなくては。

『競馬への望郷』は、競馬に想いを馳せる、
そして昭和50年代に生まれたこの本は、
駅に明るい広告が打ち出されている「KEIBA」ではなく、
ちょっと影がある、悲しみもある、
もちろん、その中に栄光がある、
裏通りの居心地の良さ、その中に差す光を感ずることができます。

昔が良かった、今の方がいいではなく、
良くも悪くも競馬が歩んで来た歴史とそれを取り巻く人生を体感できます。

文化や娯楽のあるところは人がいなくては。
そこで起きたことを誰がそれを伝えて行くのか。
いや「起きなかったことも歴史のうち」と思うのか。

今日も私は新型肺炎の収束を祈るしかない日々を過ごしてます。

現在、『競馬への望郷』は
一部の寺山修司の全集などで見る事ができますが、文庫本は古書のみになります。

※下記古書店には、ご紹介している本があるか分かりませんが、
個人的に(あくまでも勝手に)古書店を応援させていただいてます。
在庫の有無は、必ずご確認ください。古書店さんは、一期一会です。
太田書店さん (阪急古書のまち、石橋本店、Webがあります。)
http://ota-shoten.noor.jp
posted by あた at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介

2020年05月31日

お腹が空いたら『肉まんを新大阪で』平松洋子(文春文庫)

かこさんの『カラスのパンやさん』、子どもの「食べたい」気持ちを誘います。
一緒に読んでいる大人はどうかというと、そこは同じ人間、
当然ながらお腹が空きます。
ああ、お腹が空いた。絵本を読んで子どもを寝かしつけた後、
ふとある文庫を手に取ります。
この文庫本『肉まんを新大阪で』は、
食べ物のエッセイの第1人者 平松洋子さん。

今は出張が厳しい状況だが、以前は昼前に新大阪から新幹線にのると、
なんとも言えないお腹が減るにおいが。

我慢しても、我慢しきれない。そこにはあの『551蓬莱』
いや「豚まん」だろ、「肉まん」じゃないよ。
いやいや全国ベースでは「肉まん」だろう。
そんな呼び方も
豚まんを一口かじれば、熱々の肉まんの肉汁を味わえば、
そんな事吹き飛んでしまう。
美味しさはネガティブな気持ちも吹き飛ばす。
平松洋子さんのエッセイはそんなパワーを感じさせます。
一方、郷愁を感じさせるエッセイも。
「さよならの季節」は自分がお邪魔したおそばやさんの消息を。
特に新型肺炎で、そんなことも増えるかもしれません。
平松洋子さんのエッセイを、
もっと純粋に読める日々が帰ってくることを祈ってます。

『肉まんを新大阪で』平松洋子(文春文庫)

e-honホームページ
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033759437&Action_id=121&Sza_id=B0

hontoホームページ
https://honto.jp/ebook/pd_30075562.html

※下記古書店には、ご紹介している本があるか分かりませんが、
個人的に(あくまでも勝手に)古書店を応援させていただいてます。
在庫の有無は、必ずご確認ください。古書店さんは、一期一会です。
太田書店さん (阪急古書のまち、石橋本店、Webがあります。)
http://ota-shoten.noor.jp

ちなみに551のページは以下がリンクです。
551蓬莱さん https://www.551horai.co.jp
posted by あた at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介

2020年05月24日

未来を見通す力『未来のだるまちゃんへ』かこさとし(文春文庫)

かこさとしさんと言えば、『カラスのパンやさん』、『だるまちゃんとてんぐちゃん』でよく知られた絵本作家。かこさんは、2018年に逝去されますが、逝去される数年前に自叙伝が発刊されます。
この自叙伝『未来のだるまちゃんへ』は、自らの人生を振り返り、これからを生きていくこどもたち、ひいては親にメッセージを伝えます。そのメッセージでは、人類への警告も含まれてます。
つまり、人間の世の中が発達しても、人間は決しておこがましくなってはいけない、その結果、人類は滅びるのではというものです。

作品にもそのメッセージは色濃く反映されてます。
NHK教育『日曜美術館「かこさとし最期のメッセージ未来を生きる子どもたち大人たちへ」』で、かこさんが生前、作成した『宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜(下図)』を見た生物学者の福岡さん、海洋研究開発機構の小栗さん、国立科学博物館の齋藤さんは、その下図の底にある思想に驚きを感じつつ、さらにその系譜に人類への警告を感じ取ります。

短いページ、文字が少ない絵本だからこそ、そして戦争を経験したかこさんだからこそ、その言葉、着想には重みを感じる事ができます。

語り口は静かですが、力強い、地に足がついたメッセージを、未来の「だるまちゃん」はちゃんと受け止めるか、かこさんの祈りともとれるメッセージが心にせまります。

『未来のだるまちゃんへ』かこさとし(文春文庫)
hontoホームページ:https://honto.jp/ebook/pd_28275684.html

e-honホームページ:https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033531279&Action_id=121&Sza_id=B0
posted by あた at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介