前回、純粋に平松洋子さんのエッセイが読める日々を祈っている話をしました。
今回、新型肺炎で食べる時に当たり前の、「何を」「誰」と「どこで」食べるか?が制限されている、
日常の大事さを痛感してます。
食べるだけでなく、文化や娯楽に対しても同様かと。
本で例えるならば、大阪の景色をじんわりと浸る織田作之助『夫婦善哉』や
新しくは京都を颯爽とかけめぐる森野登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』など
本を読んでから景色を味わいに行くか、
景色を堪能してから、本の世界に入るかなどをいろいろと考えますが、
今の状況ではそれも難しい。
そんなことを思いながら、ふとテレビを見ると、競馬のG1レースが。
競馬も大事な文化(スポーツ)であり、娯楽。
でも、それは様々な人が様々な思いや状況を持ち寄って、成り立つもの。
無観客のレースがこんなに張り合いがないなんて。
寺山修司の『競馬への望郷』の『さらば、ハイセイコー』は、
様々な人生を様々な人が持ち寄り、ハイセイコーとの絆を詠う名作。
また、同本の『騎手伝記』では騎手の悲喜こもごもの人生を
寺山修司の名エッセイを味わうことができます。
どこも文化や娯楽があるところは、人がいなくては。
『競馬への望郷』は、競馬に想いを馳せる、
そして昭和50年代に生まれたこの本は、
駅に明るい広告が打ち出されている「KEIBA」ではなく、
ちょっと影がある、悲しみもある、
もちろん、その中に栄光がある、
裏通りの居心地の良さ、その中に差す光を感ずることができます。
昔が良かった、今の方がいいではなく、
良くも悪くも競馬が歩んで来た歴史とそれを取り巻く人生を体感できます。
文化や娯楽のあるところは人がいなくては。
そこで起きたことを誰がそれを伝えて行くのか。
いや「起きなかったことも歴史のうち」と思うのか。
今日も私は新型肺炎の収束を祈るしかない日々を過ごしてます。
現在、『競馬への望郷』は
一部の寺山修司の全集などで見る事ができますが、文庫本は古書のみになります。
※下記古書店には、ご紹介している本があるか分かりませんが、
個人的に(あくまでも勝手に)古書店を応援させていただいてます。
在庫の有無は、必ずご確認ください。古書店さんは、一期一会です。
太田書店さん (阪急古書のまち、石橋本店、Webがあります。)
http://ota-shoten.noor.jp