2020年06月09日

太宰の横には『不良少年とキリスト』坂口安吾(新潮文庫)

太宰治と交友をもった友人として先日は、檀一雄を紹介しましたが、
同じ交友をもったメンバーとて、織田作之助、坂口安吾がいます。
『不良少年とキリスト』では、太宰という盟友を失った坂口安吾は思いの丈を述べてます。太宰というと死の臭い、退廃的というイメージがありますが、それを否定し、よりよく生きたい、善行をしたかった筈と述べています。また、太宰が常識人だからこそ、すぐれた文学がかけると、太宰の世間的なイメージとは違う事を感情を出して、書き綴っています。
よくお笑い芸人が元々が変わっているから面白い事をするという話を聞きますが、実は多くのお笑い芸人はかなりの常識人、もしくは真面目に物事を見つめ、だからこそ、常識の「ずらし方」をしっているから面白いことがいえるとのこと。太宰もその「ずらし方」をよく分かっていたのでしょう。

安吾は、太宰が失踪してから手紙を書くのですが、その4日後、太宰の遺体が発見されるということとなり、安吾の心身を消耗していきます。

この『不良少年とキリスト』の表紙では、1枚の写真が掲載されています。撮影したのは、『日本の作家』で有名な林忠彦。同書では、太宰が撮影してもらった写真がありますが、大変酔っていたとのこと。右側に背中が映っている男性、これが安吾です。この時は織田作之助を元々撮影するために撮影に来たのですが、織田作之助は血痰のようなものを履いていて、「これは長くない、撮っておこう」と林は判断し、織田作之助を撮影、残りの撮影チャンスで撮ったのが、太宰治です。プロならではの考えと技術。この酒場の一シーンには、プロがプロを呼ぶ、ものすごく濃密な空間になっていたのではと推察されるのです。

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参考にした文献の「新潮日本文学アルバム」は古書店のフェアで購入しました。
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2020年06月07日

印象違う「健康的な」『正義と微笑』(『パンドラの匣』太宰治(新潮文庫))

先日、紹介した『さよなら寺山修司追悼特別号』で、再掲されている三島由紀夫との対談(1970.7『潮』より)で、太宰治について述べられています。
三島由紀夫の自信へつながる前段で「太宰治が体操やれば思想が変わったろう」ということで今も思っているかと寺山修司が訪ねられ、三島は「いまでもそう思っている。」と答えてます。三島の「太宰嫌い」は有名です。

三島はボディビルを行い、肉体改造を行い、一方、太宰は酒とタバコ、そして薬物(これは仕方ない部分もあったのですが)に頼らざるを得ないいわば「対極の2人」です。

しかし、太宰にも健康的と思える作品はあります。その代表作のひとつが、『正義と微笑』実際の日記を元に、太宰が創作した作品で、思春期の自然な、健康的な内容です。「微笑をもて正義を為せ」は太宰には出てこなさそうな言葉。明るめの代表作では「走れメロス」や「グッドバイ」があげられますが、青春の1ページが綴られていて、太宰の印象を変えます。

一方、三島由紀夫は太宰の対極に有るように見えますが、檀一雄のエッセイ集『海の泡』の「三島由紀夫」では、学習院時代と大きく変わったことが綴られています。

三島は太宰の中に、過去の自分を見た嫌悪か、変わらなくていい太宰を羨ましくおもったのか、それとも太宰を憎む事で自分の軸を持ち続けようとしたのか、そんな単純でもないでしょうが、直接あったことが一度しかない2人がこのような状況になってしまうのか、強い光をもった2人だったからもしれません。

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※下記古書店には、ご紹介している本があるか分かりませんが、
個人的に(あくまでも勝手に)古書店を応援させていただいてます。
在庫の有無は、必ずご確認ください。古書店さんは、一期一会です。
太田書店さん (阪急古書のまち、石橋本店、Webがあります。)
http://ota-shoten.noor.jp

今回の『海の泡』(講談社文芸文庫)はここで購入しました。
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2020年06月05日

他人の関心とは『三島由紀夫レター教室』三島由紀夫(ちくま文庫)

寺山修司は、歌人とともに有名な劇作家です。その寺山修司と対談したのが、
三島由紀夫。(1970.9『潮』『言葉が眠るとき、かの世界が目ざめる』)
寺山は三島に「書けないという世界は何ですか?」と聞いている。
三島は、「ぼくはないと、自信をもっている。」「書く気になって調べれば、
絶対自信ありますよ。」(『さよなら寺山修司追悼特集号』新書館より)
三島由紀夫というと『潮騒』『金閣寺』など三島独特の美についてのイメージが
ありますが、この『三島由紀夫レター教室』は
ある意味、一般的な三島のイメージとは違う世界であり、
(三島由紀夫の根幹でないかもしれないが)
三島由紀夫は書けない世界はないといった一面を見ることができます。

登場人物はやや時代を感じさせる名前や最初の説明だが、読み始めると
生き生きした登場人物の「手紙」にどんどん引き込まれて行きます。
当初、この人物は、どうなの?と思う人も、どうしてどうして、まるっきり違う印象を持つ事でしょう。

そして、この作品は手紙を通して「関心」というもの、それも自分への関心、他人への関心について鋭く描きます。
最終章は必読。一体いつの事だ?三島は生きていたのか?とうなります。

特に「他人は決して他人に関心を持ち得ない」という三島の言葉が突き刺さります。だからこそ、この「手紙」はどんな意味をもつのか。この本を読んで、皆さん体感していただければと思います。

さて、紹介した『さよなら寺山修司追悼特集号』では、寺山修司との対談で、
三島のその後を予感させる内容が記載されています。
この後、三島の決起、そして自決を寺山は分かっていたのか。

謎はつきません。

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今回の『さよなら寺山修司追悼特別号』(新書館)はここで購入しました。
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