2020年06月28日

傍らでの想いとは 小説家のパートナー

前回、檀一雄のパートナーである檀ヨソ子の話をしたが、パートナー自身が語る事もある。本人が語った、小説に書いたことの裏側を知るのは、何やらちょっと悪いことをしているような、でもたまらないような気もする。
例えば、『回想の太宰治』津島美知子(講談社文庫)。太宰治(津島修治)の妻である。日頃の話である豆腐をなぜ好んだかとか、『右大臣実朝』や『惜別』の作品のエピソードなどを伺い知る事ができる。講談社文庫の少し古い版は、表紙は太宰治の油絵が載せられている。一方、心の動きが強く感じられるのは、坂口安吾の妻『クラクラ日記』坂口三千代(ちくま文庫)である。中身は時系列で記載されているとともに、坂口安吾と三千代の出来事が結構生々しく書かれている。読んでいてハラハラするのは、明らかにこちらである。表紙は横山泰三で、ちょっと年齢が上の方はリアルに見た事がある有名な漫画家であり、三千代のイメージがよく出ている。夏目漱石の妻、『漱石の思い出』夏目鏡子(角川文庫)はどちらというと夏目漱石史といった印象を受ける。夏目漱石が亡くなった時の亡くなる直前、解剖、葬儀まで克明に記載されていて夏目漱石の文学史としてとれる。解説も夏目伸六(夏目漱石の次男)が記載している。ちょっと立ち位置が違うのが、『回想 寺山修司」九条今日子(角川文庫)。1つ1つのエピソードごと、九条今日子が寺山との会話とその時の気持ちを記載している。九条今日子は元妻。本人も書いているが、微妙な関係と思われつつも、一緒に仕事をしていて、「腐れ縁」?といっていいのか、不思議な関係を感じる。今は暴露本になってしまうのだが、ちょっと前は、エピソードや1つの作品と受けいられている、これも時代の変化なのでしょうかね。

e-honホームページ
『漱石の思い出』夏目鏡子(漱石の思い出)
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000019340061&Action_id=121&Sza_id=E1
『クラクラ日記』坂口三千代(ちくま文庫)
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000006399195&Action_id=121&Sza_id=C0
『回想の太宰治』津島美知子(講談社文庫)
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032022098&Action_id=121&Sza_id=E1
『回想 寺山修司』九条今日子(角川文庫)
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032914935&Action_id=121&Sza_id=G1

一部取り寄せで入手できにくい作品があります。その時には、古書店をご利用を。
posted by あた at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介

2020年06月26日

2人の世界に入り込む『檀』沢木耕太郎(新潮文庫)

檀一雄の代表作『火宅の人』。
最期は肺がんと闘病している最中に口述筆記で完成させた作品。今この作品を発表したら、ベストセラーどころかいわゆる「炎上」となってしまう事間違いない話でしょう。ただ、気になったのが、檀ふみさんの『父の縁側、私の書斎』ではお父さんへの思い出、愛情しかないのだ。「事を起こして」家庭内は大変だったのに違いない。特に気になったのが、パートナーであるヨソ子夫人。一体どんな気持ちだったのか。その1冊として触れたのが、『檀』(沢木耕太郎)。この話、解説の長部氏でも書かれているが、確かに「不思議」な本です。しかし、最後はこの方法で書かないで、どの方法で書くのか、と思える本である。ヨソ子夫人の一人称でいいのだろうか、淡々と語る、しかし、内容はえぐるような話もあり、はっと寒くなるような話もあり、それでも最後はと何度も何度もラストを読み返す、余韻に包まれる。確かに「不倫」は家庭崩壊させる(よくさせることはないでしょう)、それは間違いないのですが、ヨソ子夫人と檀一雄が静かに散歩していて、檀一雄の問いにヨソ子夫人がポツリポツリと答えてくと思えるこの光景。自分が真横にいたのかと思える内容。沢木耕太郎さんの『流星ひとつ』もそうですが、沢木耕太郎さんのノンフィクションの世界にどっぷり浸かれる1冊です。

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posted by あた at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介

2020年06月13日

献身的な友情を『太宰と安吾』檀一雄(角川ソフィア文庫)

坂口安吾の友人の1人、檀一雄。
坂口安吾には非常に、いやちょっとビックリするぐらい優しい、優しすぎるのだ。娘の檀ふみが『父の縁側、私の書斎』で坂口安吾をかくまう様子を綴っている。
薬のせいで混乱の最中だから、色々な問題が起こる。それでも、檀一雄は坂口安吾に献身的なのだ。坂口安吾の有名なゴミ部屋の写真、この写真は檀一雄の自宅の二階。そんな状況でも檀一雄は、一連の安吾の行動を許すのは、献身的といわず、何といえばいいのだろう。
さらに、安吾が亡くなった時に、檀一雄は『太宰と安吾』では、亡くなる直前の混乱、落胆、悲痛な様子が書かれている。太宰にも献身的で、安吾にも献身的。便覧などでは、檀一雄を『火宅の人』しか紹介されない。その本しか知らないと檀一雄の一面しか分からない。むしろ、その本だけでは、今は許されにくい倫理観であろう。檀ふみの『父の縁側、私の書斎』や彼らの交友、そして、沢木耕太郎の『檀』に触れる事によって、檀一雄の献身的な優しさ、優しさ故の行動(世間的なちょっと、、、と思う事もあるが)に理解を深める事ができる。人間は多層な面をもつ、それを一面だけで見る事のもったいなさを教えてくれた作家である。

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参考にした文献の「新潮日本文学アルバム」は古書店で手に入れました。

posted by あた at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介